ミッドソールの読み方 — フォーム素材・プレート・ロッカーを名前で見分ける

前回の記事では、ドロップ・ソール厚・重量という「数値で比較できるスペック」の読み方を解説しました。今回はその続きで、数値化しにくい構造系スペックを扱います。

  • フォーム素材
  • プレート
  • ロッカー構造

同じ「かかと40mm」の厚底でも、中身のフォームが違えば性質が違います。スペック表に並ぶ「ZoomX」「PWRRUN PB」「メタロッカー」といった名前が何を指しているのかが分かると、シューズ選びの解像度は一段上がります。

なお、この記事も実測に基づく優劣判定はしません。反発が強い=良い、ではありません。公表値をもとに、どんな人に合いそうかの整理はします——どの構造が合うかは、走る目的・ペース・体によって変わります。

結論

ミッドソールは、厚さ(数値)が同じでも、フォームの系統が違えば素材の反発や軽さが変わります。ただしフォーム・プレート・ロッカーの中身は数値で比較できないからこそ、名前の読み方を知っておく価値があります。

フォーム素材 — 商標名と化学系統は別物

結論:スペック表のフォーム名(ZoomX・PWRRUN PBなど)はメーカーの商標名で、素材の性格を決めるのはその下にある「化学系統」です。同じ厚底でもEVA系とPEBA系は性質が違います。

ミッドソールのフォームは、化学的にはいくつかの系統(ファミリー)に分類できます。代表的な4系統を整理すると:

系統 性質と代表フォーム 位置づけ
EVA系 軽く、コストと成形性に優れる。一般に、使い込むと圧縮された状態が戻りにくくなる(へたる)性質が知られる 長年の標準素材として多くのデイリートレーナーに使われてきた。スーパークリティカル製法(超臨界状態にしたガスで発泡させる製法)で発泡させた改良系(SC-EVA)は、従来EVAより軽さと反発を高めた素材として各社が採用
TPU系 熱可塑性ポリウレタン。発泡ビーズ化したeTPUの代表例がBASFの「Infinergy」。BASFは高い反発弾性と、低温でも硬くなりにくい温度安定性を特徴として説明。EVA系より比重が大きい(重くなりやすい)傾向がある 2013年からadidas「Boost」フォームの中身として、高反発フォーム時代の扉を開けた素材
PEBA系 ポリエーテルブロックアミド。素材の代表例が素材メーカーArkemaの「Pebax」で、同社は軽さ・高いエネルギーリターン・低温でも性能が落ちにくいことを特徴として説明 現行のレーシングフォームの代表格。柔らかく軽く発泡させたレーシングフォームを、多くのメーカーはレース・スピード練習向けと位置づけており、毎日のジョグ用とは役割を分けた設計が主流
TPEE系 熱可塑性ポリエステルエラストマー。adidasの現行レーシングフォーム「Lightstrike Pro」を積むモデルについて、この系統の発泡フォームだと書いている海外のランニングメディアがある(adidas公式の説明には系統が書かれていない=表の下で説明) 2026年の箱根駅伝で2年連続の着用率1位と報じられたadidas勢の主戦フォームで、日本のレースシーンで今もっとも存在感のある系統の一つ

Lightstrike Proについて、adidas公式は「低密度・高反発素材」と説明し、化学系統そのものは明言していません。そこでシューログのデータベースでの表示は、次のとおりです。

  • そのモデルを名指しして系統を書いている専門メディアの記述があるときだけ、モデルごとに「業界情報ベース」の系統を表示しています
  • そうした記述が見つからないモデルは、系統を「非公表」または「未取得」と表示しています

業界情報ベースの系統は、メーカー公表の系統としては扱っていません。

このほかにもPU・POE・TPEなど複数の系統があります。大事なのは、「反発・耐久・温度への強さ」のバランスが系統ごとに違うということです。だから「厚さ40mm」という数値が同じでも、EVA系の40mmとPEBA系の40mmでは、跳ね返りも、へたるまでの距離も、冬の朝の硬さも変わります。

そして、系統の顔ぶれは固定ではありません——フォームの世界は今も世代交代の途中です。

  • かつての代表格Boost(eTPU)は、現在のadidasのレースモデルでは上のLightstrike Pro系に主役の座を譲りました
  • 一方、TPU系には脂肪族TPU(A-TPU)という新世代が登場しています

A-TPUは、PUMAが最上位レーシングフォーム「NITROFOAM ELITE」に採用した素材として、海外のランニングメディアで「TPUの反発と耐久を軽い発泡で引き出す新顔」と紹介されています。

出典(5本)

自分の一足で試すなら:いま履いているシューズの公式ページで、フォームの商標名(スペック表の素材名)を調べてみてください。系統の見分け方は次の節へ。

系統をどう確かめるか — 公表・業界情報・非公表

結論:フォームの化学系統は、メーカーの公式明言か、出典を示せる業界情報があるときだけ確定します。どちらも無いものは推測せず、確認した結果として明言が無かったものは「非公表」、まだ確認できていないものは「未取得」と表示します。

では、手元のシューズのフォーム名がどの系統なのかは、どう調べればよいのでしょうか。根拠の確度は2つ(メーカー公表・業界情報)で、どちらも無いときの表示が2つ(非公表・未取得)あります。シューログのデータベース——各シューズページの素材欄——も同じ区分で表示しています。

確度 何を根拠にするか シューログでの表示
メーカー公表 メーカー公式・自社特許の明言。Sauconyは公式サイトのフォーム解説ページで、レーシングフォーム「PWRRUN PB」=PEBA系を明言。adidasのBoostがeTPUであることは、素材供給元のBASFが公式に説明。TopoのようにArkemaの「Pebax Powered」提携ブランディングを掲げる場合は、商標名自体が系統の明言になる 「メーカー公表」として確度つき・出典リンク付きで表示
業界情報 公式の明言はないが、素材業界や海外のランニングメディア(非RunRepeatの独立媒体)が出典を示して系統を解説している。この記事でも出典を添えて「〜と紹介されています」の形で扱う(上のLightstrike Pro=TPEE系や、A-TPUがその例) 「業界情報ベース」として表示
非公表 メーカー公式の説明に化学系統の明言が無いことを確認した、あるいは複数の情報源で見方が割れている 推測で埋めず「系統:非公表」と表示
未取得 シューログがまだ系統を確認できていない 推測で埋めず「系統:未取得」と表示
出典(1本)

どちらの確度で判定したかを毎回明示し、検索や比較の土台になるデータを無出典の伝聞では埋めない——これがシューログの決め事です。実際、シューログ収載166件のうち85件は、化学系統を表示していません。

  • メーカー公式の説明に化学系統の明言が無いことを確認したものが37件
  • まだ確認できていないものが48件

各シューズページの素材欄に、出典の種類ごとの表示があります。

自分の一足で試すなら:いま履いているモデルのシューズページを開いて、素材欄の確度表示がどれか(メーカー公表/業界情報ベース/非公表/未取得)を確かめてみてください。

3系統の性格を「数字」で見る — 反発・軽さ・温度

結論:EVA系・TPU系・PEBA系は、反発(跳ね返り)・軽さ(密度)・温度への強さが、実験室の計測でも系統ごとに異なります。「かかと40mm」が同じでも、系統でこの3つが違います。

素材メーカーや大学の公開研究では、フォームの性格を数値で計測しています。シューログはRunRepeatのような分解・実測データは転載しませんが、こうした一次・学術ソースから、系統ごとの傾向は次のように整理できます。

系統 反発(エネルギーリターン/反発弾性) 軽さ(フォーム密度) 温度への強さ
PEBA系 高い(反発弾性 最大約80%) 最も軽い(約0.09〜0.17 g/cm³。TPU系より20〜30%ほど軽いとされる) 広い温度域で性能を保ちやすい
TPU系(eTPU) 中程度 やや重い(約0.24 g/cm³) 低温でも硬くなりにくい(約−60〜120℃で安定)
EVA系 控えめ(反発弾性 約59%) 中位(約0.17〜0.23 g/cm³) 低温で硬くなりやすい
ミッドソール素材の性格マップ。縦軸は反発性(エネルギーリターン)、横軸は耐久性(反発の維持しやすさ)。PEBA系は反発が高いが維持は弱め、TPU系(eTPU)は反発中程度で維持に強く、EVA系は反発控えめ、SC-EVA系はEVAより反発を高めた中間。A-TPU系は耐久の独立データなしの参考配置。系統ごとの一般的傾向であり個別モデルの実測値ではない。
系統ごとの性格マップ(定性配置・出典は図内脚注)。個別モデルの実測値ではありません。タップで拡大できます。

数字で見ると、系統の役割分担がはっきりします。

反発:反発弾性(跳ね返る力)は系統で大きく違います。

  • EVA系フォームが約59%という研究の計測例に対し、PEBA系は最大約80%と報告されています
  • 先進フットウェア技術(いわゆる厚底レーシングの技術)のフォーム(PEBA系が中心)は、従来型(EVA系が中心)より高いエネルギーリターンを示すものです
  • 複数の研究で報告されており、おおむねPEBA > TPU > EVAの順になります

レース用にPEBA系が選ばれる理由がここにあります。ただし——反発が強い=速い・良い、ではありません。体感と結果は組み合わせと走り方しだいです(詳しくはプレートの節で)。

軽さ:PEBA系はフォーム密度が最も低く、同じ厚さでもシューズを軽く仕上げやすい——レースフォームにPEBA系が多い理由の一つです。

温度:冬の朝にソールが硬く感じるかどうかも系統差です。

  • TPU系(Boostなど)は低温でも硬くなりにくい
  • EVA系は低温で硬化しやすい傾向が知られています
  • PEBA系は軽さと反発を保ちつつ広い温度域で性能が落ちにくいとされ、寒冷地や冬のレースでのフォーム選びの手がかりの一つです

耐久(トレードオフ):一方で、軽く低密度なPEBA系は、使い込むと反発の優位が縮む、という報告があります。レース用のフォームを普段のジョグですり減らさない——この履き分けの理由の一つが、いま見た耐久の差です。

出典(7本)

データで見る時の注意:

  • 系統は世代やモデルで変わることがあります(同じ商標名でも配合が更新される)。系統表示はあくまで出典時点の情報として読んでください
  • 上の比較表の数値は系統(ファミリー)ごとの一般的傾向です。同じPEBA系でも製法・配合で差があり、個別モデルの実測値ではありません
  • 各フォームを実験室で計測・分解した実測データは、海外サイトのRunRepeatが詳しいです。素材の柔らかさや反発の実測比較はそちらを参照してください

数値で比較できるスペック(重量・ソール厚等)で絞り込むならシューズ検索へ。

「柔らかい」と「反発がいい」は別物

結論:柔らかさ(沈み込み)と反発(跳ね返り)は別の性質です。「柔らかい靴=反発がいい靴」でも、「反発がいい靴=速く走れる靴」でもありません。

  • 柔らかさは、体重をかけた時にフォームがどれだけ沈むか(硬度)。着地の当たりの優しさに効きます
  • 反発は、沈んだフォームがどれだけエネルギーを返すか(エネルギーリターン/反発弾性)。上の比較表とマップが扱っているのはこちらです
  • 柔らかくても返りが遅いフォームもあれば、硬めでも高反発なフォームもあります

エネルギーリターンの測定・解釈には研究上の議論もあり(Shorten 2024のレビュー)、「反発の数値が高い=良い」と単純化できません。

この記事の素材表示・性格マップは反発を軸にしています。柔らかさの実測比較は扱いません(実験室の計測はRunRepeatなど実測サイトの領域です)。

データで見る時の注意:

  • 「クッション性」という言葉は柔らかさ・厚さ・反発が混ざって使われがちです。数値で選ぶなら「ソール厚」「反発(系統の傾向)」「柔らかさ(実測サイト)」を分けて見るのがおすすめです

フォームは使うと「へたる」 — 経年劣化とローテーション

結論:フォームの反発は走った距離とともに落ちます。落ち方は系統で違い、特にPEBA系レーシングフォームは「厚みが残っていても反発が落ちる」ことが実走研究で報告されています。

現象 データ 出所の性質
フォームは繰り返し圧縮されると内部構造が潰れて密になり、クッション性と反発が低下していく EVA・TPU・PEBA系フォーム5種の繰返し圧縮実験 学術研究の圧縮実験(Aimar et al. 2024)
PEBA系スーパーシューズは、距離とともに反発の優位が縮む 約450km使用するとランニングエコノミー(燃費)が有意に低下し、新品時のEVA系に対する優位が消えた。同じ条件でEVA系はほぼ変わらなかった 実走研究(Rodrigo-Carranza et al. 2024)
発泡TPU(eTPU)は繰り返しの使用に強い系統とされる 50万回の圧縮サイクル後も永久的な潰れが小さかった 素材の繰返し圧縮試験の報告
見た目の厚みが残っていても反発は落ちている——ということが起こり得る PEBA系でも「厚みの保持(圧縮永久ひずみ=力を抜いたあとに残る潰れ)は良好」とする説明がある。ここでいう「へたり」は反発の低下の話 素材メーカー(Arkema)の説明
潰れたフォームは、時間をかけてある程度戻る(回復する)という資料がある 圧縮したあとの回復を30分後と24時間後で比べる静的試験(23℃で22時間圧縮/50℃で6時間圧縮の2条件)と、10万サイクル・40℃の動的疲労試験が示されている。動的試験の図では、OBC系とE-TPU系の回復率が時間の経過とともに上がり続け、数十〜数百時間のあたりまで上昇が続くように読み取れる(EVAは早い段階で頭打ちに見える) 素材メーカー(Dow)の技術資料。ただし、自社素材を他素材と比べる販促目的の資料で、資料自体に「典型値であり仕様として解釈すべきものではない」と明記されている

最後の行については、限界を3つ添えておきます。

  1. これはDowが自社素材(INFUSE™ OBC)をE-TPUと比較する文脈の技術資料で、中立な第三者の試験ではありません
  2. 対象は生のフォーム素材であって、シューズのミッドソールそのものではない、という点です
  3. 図の読み取りは目視によるもので、何時間で何%戻る、といった数値を断定できるものではありません

したがって、ここから「何日休ませればよい」という処方箋を引き出すことはできません。言えるのは、フォームは圧縮された直後の状態で固定されるわけではなく、時間をかけてある程度戻るらしい、という程度のことです。

この性質は、シューズの履き分け(ローテーション)の根拠になります:

  • レース用(PEBA系中心)は本番とポイント練習に温存し、距離を使い込まない
  • 毎日のジョグは耐久に強い系統・練習用モデルに任せる
出典(5本)

自分の一足で試すなら:「何km走ったか」をモデルごとにメモしておいてください。反発が落ちた頃合いの見当がつきます(マイシューズ登録と走行距離メモの併用がおすすめです)。

プレート — 「速くなる魔法」ではなく、走り方を変える構造

結論:プレートは推進力を足すパーツではなく、フォームと組み合わさって「足の使われ方」を変える構造です。カーボン=速い、と単純化しないのが読み方のコツです。

カーボンプレート入りって、初心者が履いてもいいの?

シューログ

履いてよいかどうかは、シューログでは判断できません。効果も体への負担も、フォームや走り方との組み合わせで変わることまでしか研究からは言えないからです。代わりに、下の3件の研究が何を示して何を示していないかを整理します。

現行のレーシングシューズの多くは、ミッドソール内に湾曲したプレート(カーボンファイバー製が代表・ナイロンなど樹脂製もあります)を内蔵しています。シューログのプレート欄の分け方は、次のとおりです。

  • 「カーボン」:カーボン繊維を使っているとメーカーが明記したもの(「カーボン強化ナイロン」のようにカーボン繊維で強化したものを含む)
  • 「ナイロン」:カーボン以外のプレートのうち、ナイロン製のほか、ガラス繊維のロッドや樹脂製のプレートもここにまとめています
  • 「樹脂」:2026年9月に設けた欄で、メーカーが樹脂製と明記したものを分けています(それより前に分類した靴は「ナイロン」のままです)
  • 「なし」:On の一部の靴(ガラス繊維強化ナイロンの Speedboard® など)は判定を保留していて、「なし」と表示しています

この設計の読み方は、公開研究3件で整理できます。

研究 分かったこと 読むときの留意
Hoogkamer et al. 2018(注目の起点になった研究) Vaporfly型のプロトタイプシューズは、当時の他のマラソンレーシングシューズと比べてランニングの代謝コスト(エネルギー消費)を平均4%下げた(時速14〜18kmの3速度とも約4%) 試作靴はフォームとプレートを併せ持ち、両者を分けては調べていない。著者は現時点では主に靴の弾性(沈み込みの大きさ)で説明している。4%は実験参加者の平均値で、節約幅には個人差がある。エネルギー消費の改善率がそのままレースタイムの短縮率になるわけでもない
Healey & Hoogkamer 2022(同じ研究グループの追試) Vaporflyのプレートに切れ込みを入れて縦曲げ剛性(たわみにくさ)を下げても、エネルギー消費の節約効果はほとんど変わらなかった 研究チームは、効果の源はプレートの硬さ単独ではなく、フォーム・ソール形状・湾曲プレートの相互作用にあると結論づけた
骨ストレス障害の症例報告(2023年発表) カーボンプレート搭載シューズの使用者における骨ストレス障害(疲労骨折など)の症例報告がある 因果関係が確定したわけではないが、「報告がある」ことは知っておく価値がある。著者は、履き慣れた靴からゆっくり段階的に移行することを提案している

つまり「カーボンプレートが入っているから速い」「硬いほど速い」という読み方は、研究が示していることに比べて、単純化されすぎです。プレートはフォームの変形の仕方と足指の曲がり方を変える部品であり、効果の出方は組み合わせと走り方に依存します。プレート搭載シューズが初めての方は、短い距離から段階的に試すのが無難です。上の症例報告の著者が提案しているのは、履き慣れた靴からゆっくり段階的に移行することで、「短い距離から」はそれを練習の言葉に置き換えたものです。この進め方がけがを減らすと確かめた研究はありません。試す順番はカーボンプレートのシューズの記事にまとめています。

競技規則の面では、前回の記事で紹介したWorld Athleticsの規則が、スパイクのないシューズに内蔵できる硬質構造(プレート等)を1枚までと定めています(Athletic Shoe Regulations 規則8.5.1・適用範囲は公認競技会に出場する選手)。

出典(4本)

データで見る時の注意:

  • プレートの有無・素材(カーボン/ナイロン等)はメーカー公表情報として比較しやすい項目といえます
  • 「プレートあり」の中でも形状・配置・剛性は様々で、そこは公表数値がない領域です。最後は用途(レース用か、テンポ走用か)で読むのが実用的です

自分の一足で試すなら:いま履いている一足にプレートが入っているか、素材は何かを、シューズページで見てみてください。

プレートの有無・素材で絞り込むならシューズ検索へ。

ロッカー構造 — ソールの反りで「転がして」進ませる設計

結論:ロッカーはソール前後の反り上がりで、体重移動を転がすように促す構造です。角度などの数値は各社とも非公表のため、「機能名があるか」で見分けます。

ロッカー構造って何なの? スペック表に名前だけ書いてあっても分からないんだけど。

シューログ

ソールの前後を反り上げて、体重移動を転がすように促す形のことです。反りの角度は各社とも公表していないので、メーカーが付けた機能名で見分けます。

ロッカー(rocker)は、ロッキングチェアの脚のようにソールを湾曲させ、着地から蹴り出しまでの体重移動を転がすように促す設計です。ソールが厚くなるほど足首や足指で地面を掴む動きは使いにくくなるため、厚底化・プレート搭載とロッカー形状は事実上セットで発展してきました。

メーカーはこの構造に固有の機能名を付けて説明しています。実例を2つ挙げると:

機能名 メーカー 何をする設計か
メタロッカー HOKA 自社の主要テクノロジーの一つとして解説する前後の湾曲設計。公式サイトでは、ロッキングチェアのようなカーブで体重移動をスムーズにすると説明されている
GUIDESOLE ASICS 弓形にカーブしたソールと二層構造のミッドソールで、走行中の足首の屈曲を減らしエネルギー消費を抑える設計。アシックスは着地時の足首まわりの負担を約20%削減する(同社公表値)などの説明を公開している
出典(2本)

読み方のもう一つの手がかりは、どこが反っているかです。

  • つま先側の反り(前足部ロッカー)は、蹴り出しの転がりを助ける
  • かかと側の反り(ヒールロッカー)は、着地から接地の中盤(足裏全体が地面に着いている局面)への移行を助ける

メーカーの機能説明を読むときは、「どの局面を助ける設計か」に注目すると、モデルどうしの性格の違いがつかみやすくなります。

もう一つ、乗り換え時の目安です。上のGUIDESOLEの説明が示すように、ロッカーは足首まわりの動きの一部をソールの転がりで肩代わりする設計です。

女性の持久系ランナー16人がロッカー形状の靴と普通の靴を履き比べた実験では、ロッカー形状の靴で、地面に着いている間に足首を蹴り出す向きに回す力(底屈モーメントのピーク)が11%小さくなり、膝を伸ばす向きの力(伸展モーメントのピーク)は6%大きくなりました。同じ研究グループによる2013年の実験(16人・ゆっくりのランニング)でも足首の力は小さくなりましたが、膝には差が出ていません。どちらも実験室で靴を履き替えて測った結果です。

ランニング用のロッカーの研究をまとめた2026年のレビューでは、けがを前向きに追った研究は0本でした。慣らし方を比べた研究も、シューログが調べた範囲では見つかっていません。そのうえで、フラットなソールからロッカーの強いモデルに履き替えるなら、短い距離から試して様子を見るのが無難です。

出典(3本)
  • 出典:Sobhani, S., van den Heuvel, E. R., Dekker, R., Postema, K., Kluitenberg, B., Bredeweg, S. W., Hijmans, J. M.「Biomechanics of running with rocker shoes」Journal of Science and Medicine in Sport 20(1):38-44, 2017(DOI: 10.1016/j.jsams.2016.04.008・ランダム化クロスオーバー(女性持久系ランナー16人・実験室の3次元動作解析)。ロッカーシューズで足首の底屈モーメントのピーク11%減・膝の伸展モーメントのピーク6%増。抄録で確認(膝の結果が2013年の同グループの研究〔sobhani-2013〕と分かれるのは当サイトが2本を並べた整理)・2026-10-26確認) ↑本文に戻る
  • 出典:Sobhani, S., Hijmans, J., van den Heuvel, E., Zwerver, J., Dekker, R., Postema, K.「Biomechanics of slow running and walking with a rocker shoe」Gait & Posture 38(4):998-1004, 2013(DOI: 10.1016/j.gaitpost.2013.05.008・健常ランナー16人・ゆっくりのランニングと歩行。足首の底屈モーメントのピークが減り、膝・股関節のモーメントに有意差なし。下腿三頭筋の筋電の振幅にも差なし。抄録で確認・2026-10-26確認) ↑本文に戻る
  • 出典:Khusal, P., Frecklington, M., Gardner, S., Jackson, A.「Rocker Geometry in Running Footwear: A Scoping Review of Definitions, Commercial Descriptors and Outcome Measures」Journal of Foot and Ankle Research 19(3):e70200, 2026(DOI: 10.1002/jfa2.70200・19研究のスコーピングレビュー。資金欄にASICS New Zealandが含まれる(研究デザイン等には関与していないと明記)。検討したブランド数が要約と本文で食い違うため当サイトはブランド数を引用しない・2026-08-24確認) ↑本文に戻る

一方で、ロッカーのカーブの角度や開始位置といった数値は、各社とも公表していないのが通例です。つまりロッカーは「数値で比較できない領域」で、比較の手がかりはメーカーが機能名を付けて説明しているかどうか、になります。シューログでも、ロッカーの扱いは次のとおりです。

  • 公式ページで機能名を確かめられたモデルだけ、その名称を記載しています
  • それ以外のモデルには、ロッカーの欄を出していません(独自に「ロッカーあり」と判定することはしません)

データで見る時の注意:

  • ロッカーの欄が無い=ロッカー形状がない、ではありません(名前を付けずに湾曲させているモデルや、シューログがまだ公式ページで機能名を確かめていないモデルもあります)
  • ロッカーの効き方はドロップ・ソール厚とも連動します

自分の一足で試すなら:いま履いているモデルの公式ページに、ロッカーの機能名(メタロッカー・GUIDESOLEのような名前)があるか探してみてください。

気になるモデルを数値スペックと合わせて見るなら比較ビューへ。

いま履いている一足の「中身」を調べておく

結論:構造系スペックを最速で自分のものにする方法も、数値と同じです——いま履いているシューズのフォーム名・プレート・ロッカーを一度調べておくことです。

第1弾の記事では、ドロップ・ソール厚・重量を「いま履いているシューズとの差分」で読む方法を紹介しました。構造系スペックは数値ではないので差分計算はできませんが、代わりに変化点で読めます。次の候補のシューズは、今の一足と比べて——

  • フォームの系統が変わるのか(例:EVA系→PEBA系)
  • プレートが初めて入るのか・素材が変わるのか
  • ロッカーの機能名が付く設計になるのか

厚さの差は数値で見えますが、この3つの変化点は、スペック表には数値ではなく名前(系統・プレートの素材・機能名)で載ります。履き替える前に、名前で確かめておいてください。プレートが初めて入るときや、ロッカーの強いモデルに替えるときは、この記事で触れたとおり、短い距離から試すのが無難です。

シューログに手持ちのシューズを登録すると、各モデルのページでフォーム名・プレート・ロッカーの公表情報を確認できます。まず自分の一足の「中身」を知っておくと、スペック表の名前が意味を持ち始めます。

手持ちの一足を基準にするならマイシューズ機能へ。

まとめ — 構造系スペック3要素とシューログでの扱い

結論:数値で比較できるスペック(ドロップ・ソール厚・重量)と違い、構造系スペックは「名前と出典を確認する」のが読み方の基本です。

要素 読み方の要点 シューログでの扱い
フォーム素材 商標名と化学系統は別物。系統で反発・耐久・温度の性格が変わる 商標名は公表値として記載。化学系統(foamFamily)はメーカー公表または出典明示の業界情報がある場合のみ確度つきで表示・どちらもなければ「非公表」(メーカー公式の説明に明言が無いことを確認済み)または「未取得」(未確認)
プレート 有無・素材で読む。「カーボン=速い」と単純化しない 有無・素材で検索可能
ロッカー 数値非公表の領域。公式の機能名で見分ける 公式ページで確かめた機能名のみ表示(それ以外のモデルは欄を出さない)・独自判定はしない
  • 記載している情報はメーカー・素材メーカーの公表情報と公開研究に基づいたものです
  • フォームの化学系統が確認できないものは推測せず、確認した結果として明言が無かったものは「非公表」、まだ確認できていないものは「未取得」と表示します。ロッカーの機能名は、公式ページで確かめられたものだけを載せています
  • フォームやプレートの実測・分解データはRunRepeat(海外サイト)が詳しく、本記事の分類と合わせて読むと理解が深まります

情報の収集・検証プロセスは運営ポリシーをご覧ください。

商標名ではなく、化学系統で読む。

次のステップ:シューズ検索でプレート有無を絞り込む / 気になる2足を比較する

数値スペックの読み方は第1弾の記事へ

公開日 2026-07-07|更新日 2026-10-26

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