反発・衝撃吸収・柔らかさは何が違う? ラボ実測値の見方

シューズの個別ページを下まで開くと、「外部の実測データ」(見出しの横に小さく RunRepeat)という表に数字がいくつか並びます。反発が何%、衝撃吸収が何SA、柔らかさが何AC——見た瞬間に、どれが「クッションの数字」なのか迷った人は多いはずです。

この記事は、個別ページのラボ実測値を見て、3つの数字の違いが分からない人に向けて書いています。①それぞれどう測られているか ②なぜ3つが一致しないのか ③自分の靴のページで何を見ればいいか ④高いほど良いと言えるのか、の順に並べます。

読み終えると、「クッションが良い靴が欲しい」というひとつの問いが、「跳ね返りの強さ・着地の衝撃の減り方・接地したときの沈み方のうち、自分はどれを求めているのか」という3つの問いに分かれます。

結論

反発・衝撃吸収・柔らかさは、別々の試験から出た別々の数字で、同じ向きに動くとはかぎりません。まず自分が知りたいことを決めて、それに対応する1つだけを見ます。

  • 跳ね返りの強さ → 反発(%・大きいほど強い)
  • 着地の衝撃の減り方 → 衝撃吸収(SA・大きいほど受け止める)
  • 沈み方 → 柔らかさ(ACまたはHA・小さいほど柔らかい)

反発・衝撃吸収・柔らかさはどう測られているか

3つのうち反発と衝撃吸収は同じ試験から出てきますが、柔らかさだけは別の道具で、別の場所を測っています。

反発と衝撃吸収は、どちらも落下試験から出ます。アッパーを取り外して底だけにしたシューズを固定し、決まった重さのおもりを決まった高さから落として、その一撃を機械が記録する。入れたエネルギーのうちどれだけが戻ってきたかの割合が反発(%)で、その衝撃をどれだけ受け止めたかを表すのが衝撃吸収(SA)です。ひとつの落下から2つの数字が出るので、同じ試験なのに別の指標になります。測る場所は、かかと側と前足部の2か所に分かれています。RunRepeatはこの試験を、靴底材の衝撃吸収とエネルギー返還を測るASTMの規格に沿って行っていると説明しています。

模式図。アッパーを外して底だけにしたシューズを固定し、決まった重さのおもりを決まった高さから落とす。測るのはかかと側と前足部の2か所。同じ1回の落下から、入れたエネルギーのうち戻ってきた割合=反発(%)と、その一撃をどれだけ受け止めたか=衝撃吸収(SA)の2つの数字が出る
落下試験。同じ1回の落下から、反発(%)と衝撃吸収(SA)という別々の数字が出ます。

柔らかさは、まったく別の道具です。使うのは硬度計(デュロメーター)で、針状の先端を素材に押しつけ、どれだけ沈むかを読み取ります。そして、その先端を当てるのはミッドソールの切断面です。シューズを縦に切ってから測る、という手順が要ります。

模式図。①シューズを縦に切って切断面を出す。外側の保護層や表面の凹凸は一緒に読んでしまうので測らない。②アッパー・ミッドソール・アウトソールの層が見える切断面に硬度計の先端を押しつけ、どれだけ沈むかを読む。値が小さいほど柔らかい逆向きの目盛りで、AC(アスカーC)とHA(ショアA)は別の目盛りのため換算しない
硬度計。当てるのはミッドソールの切断面で、外側の面ではありません。

なぜ切るのか。外側からそのまま当てると、多くのシューズが持っている外周の保護層や、表面の凹凸を一緒に読んでしまうからです。中の素材がどれだけ柔らかくても、外側が硬く作られていれば読み値は硬い側に寄ります。先方は、切った断面で測った値と外から測った値を並べて、この差が無視できないことを示しています。

もうひとつ、柔らかさの数字には注意点が2つあります。

ひとつは向きです。反発も衝撃吸収も数字が大きいほうが強い側ですが、柔らかさだけは値が小さいほど柔らかいという逆向きの目盛りになっています。ここだけ読み方がひっくり返るので、混ぜると意味が反転します。

もうひとつはスケールです。硬度計の値は、それ自体が量を表す物理単位ではありません。「同じ種類の硬度計で測った他の素材と並べたとき、どのあたりに来るか」を示す相対的な目盛りです。しかもRunRepeatは2026年2月に硬度計の種類をショアA(HA)からアスカーC(AC)へ切り替えているので、紙面には2つの目盛りが混在します。先方自身も、この2つを突き合わせて読むことは勧めていません。シューログもACとHAを換算せず、そのまま出しています。

自分の一足で確かめるなら:まず自分のシューズのページを開いて、反発の単位が%、衝撃吸収がSA、柔らかさがACかHAのどちらか、というところまでを目で確認してみてください。3つが別の物差しで、柔らかさだけ向きが逆だと分かるだけで、混ぜて読む事故が減ります。

単位や出典の読み方そのものは、ランニングシューズの数値の読み方にまとめています。

3つの数字は一致しない

「反発が高い=柔らかい=衝撃をよく吸収する」という一続きの読み方は、実測のうえでは成り立ちません。

いちばん取り違えられやすいのが、反発と衝撃吸収です。この2つは、同じ落下から出てくるのに別のことを表しています。反発は戻ってきた割合、衝撃吸収は受け止めた度合い。RunRepeatの解説では、この2つに強い相関は見られないと説明されており、跳ね返りが強いのに衝撃の受け止めは平凡なシューズも、その逆も実在すると書かれています。

柔らかさと衝撃吸収も、同じではありません。柔らかい素材のほうが衝撃を受け止めやすい傾向はあるものの、先方の説明では、その関係はきれいな比例にはならないとされています。柔らかくてもすぐ底づきしてしまえば衝撃は抜けますし、硬めでも厚みや接地面の広さで受け止めているシューズもあります。

厚さと反発も別物です。ソールが厚いほど反発が高い、という関係は先方の解説では確認されていません。ここで効いているのは厚みではなく素材のほうだと説明されています。ソールが薄くても高反発の素材を使ったシューズが、厚いだけで素材が従来型のシューズを上回ることがある、という書き方です。

そしてもうひとつ、記事を通して分けておきたい区別があります。実測の反発(%)と、履いたときの反発感は別物です。実測の反発は、人が乗っていない底に一撃を加えて測った値です。いっぽう履いたときに感じる跳ね返りは、シューズの重さ・プレートの有無・ソールの形・その日のペースや疲労が全部混ざった結果です。だから、数字が高いのに手応えが乏しいことも、数字はほどほどなのによく進む感じがすることも起こります。数字は感覚の答え合わせの材料であって、感覚の置き換えではありません。

自分の一足で確かめるなら:いま持っているシューズを2足選んで、反発・衝撃吸収・柔らかさの3つを書き出してみてください。3つの大小の並び順が2足で入れ替わることがあるはずで、それがそのまま「一致しない」の実例になります。

ソールの素材そのものの違いは、ミッドソール素材の違いに整理しています。

自分の靴のページで、ラボ実測値のどこを見るか

シューログの個別ページでは、指標が1行ずつ並んだ表が1つあり、行ごとに「この靴」の値と、掲載している足の中央値が並びます。

表の見方は3つだけです。

シューログの個別ページの実物の表(2026-10-18時点・ASICS NOVABLAST 6、マイシューズに ASICS NOVABLAST 5 を登録した状態)。①が「かかと」「前足部」の小さなラベル、②が「この靴」「中央値」「マイシューズ(靴の名前)」の列の見出し、③が値の右に付く%などの単位。表の下に出典と取得日の行がある
個別ページの外部の実測データの表(①かかと/前足部 ②列 ③単位)。値はRunRepeatの測定・出典と取得日は画像内の出典行のとおり。
  1. かかと/前足部=表は1つの指標が1行です。反発・衝撃吸収・ミッドソール幅などは、1つの欄の中に「かかと」「前足部」の2段で値が出ます。同じシューズでも前後で値が違うので、自分の着地がかかと寄りなのか前寄りなのかで、見る段が変わります。柔らかさやグリップのように、値が1つだけの指標もあります
  2. 列=値の列は、左から「この靴」「中央値」の順です。中央値の値の下には、その中央値を何足から出したか(「掲載◯足」)が出ます。さらに、いま選んでいるマイシューズ1足のページを開いたことがあれば、いちばん右にその一足の名前の列が並びます(画面の幅によっては、名前の前に「あなたの」が付きます)
  3. 単位=反発は%、衝撃吸収はSA、柔らかさはACまたはHA。単位は各値の右に出ます。単位が違うものどうしは比べられません。そして柔らかさだけは、値が小さいほど柔らかい向きです

中央値の列について、意味をはっきりさせておきます。これはシューログが掲載している足のうち、同じ単位で値を持っているものだけを並べたときの真ん中の値です。全シューズの平均でも、世の中の標準でもありません。母集団が小さい指標や、測り方・母集団がそろわない指標(屈曲のかたさ、外部の実測のソールの厚さなど)では、中央値を出さず、欄を「—」にしています(マイシューズの列の「—」は、その一足にその値が無いという意味です)。柔らかさのようにACとHAの2つの目盛りが混在する指標では、この靴と同じ目盛りの足だけで中央値を出し、値の右にその目盛りを付けています。母集団が何足かは、中央値の値の下の「掲載◯足」です。

そして、中央値より上か下かは順位ではありません。真ん中より跳ね返りが強い、真ん中より沈みにくい、という位置が分かるだけで、良し悪しの評価ではありません。だからシューログは、この表に色分けも矢印も差の計算も置いていません。並べ替えや絞り込みの軸にも使っていません。

基準点としていちばん役に立つのは、中央値よりもマイシューズの列です。いま履いている一足の数字が横に並ぶと、「この靴は自分のより反発が高いのか低いのか」を、自分の体の記憶と突き合わせて読めます。

最後に、この表の値はすべてRunRepeatの測定であり、シューログが測ったものではありません。出典と取得日は表の下に常に出していますし、元の測定ページへのリンクもそこにあります。単位や試験の中身は、ページの末尾の「データの出典と注記」を開くと出ます。

自分の一足で確かめるなら:マイシューズを登録して、そのシューズのページを一度開いておいてください。それ以降、他のシューズのページを開いたときに、自分の一足が比較の基準として横に並びます。この控えはひと月ほどで切れる作りなので、列が出なくなったら自分の一足のページを開き直してください。

気になるシューズを探すところからなら、シューズを探すが入口です。

高いほど良い数字なのか

反発も衝撃吸収も、高いほど良いと一律には言えません。どちらの数字も、研究で確かめられている範囲が限られているからです。

まず反発から。高反発の素材と硬いプレートを組み合わせたシューズが走りのラクさを改善する、という研究はあります。ただしその代表的な報告で測られているのは一定の速さで走るときの酸素摂取量(と二酸化炭素の排出量。ここからエネルギーコストを計算しています)、つまり同じ速さで走るのにどれだけエネルギーが要るかであって、ラボの反発の値そのものではありません。これは最大酸素摂取量(VO2max)のような能力の上限を測ったものではなく、それより下の一定ペースで測った値です。

競技力の高いランナー18名を対象にした試験では、新型のプロトタイプが従来のレース用シューズに比べてエネルギーコストを平均で約4%下げたと報告されています。ここで見落とされやすいのは測ったペースの側です。この試験が走らせたのは時速14〜18kmで、フルマラソンに置き換えると2時間20分〜3時間に届く速度帯です。さらにこの試験ではシューズの重さを揃えたうえで比べています。この範囲の中では、差の大きさは速度によって変わらなかったと報告されています。ただし、報告しているのはあくまでこの範囲の話です。同じ差が、もっとゆっくりのジョグでもそのまま出るとは、この研究からは言えません。

次に衝撃吸収です。「衝撃を吸ってくれるほど脚は守られる」と考えたくなりますが、ここは向きが割れています。ランナーを対象に、厚いクッションのシューズと従来型を履き比べた測定では、厚いほうで着地の衝撃のピークと荷重の立ち上がりがむしろ大きくなりました。速い側(時速14.5km)でその差がはっきりし、遅い側(時速10km)では差は小さくなっています。著者はこれを、柔らかい靴で着地するときに脚を硬くして使うためだと説明しています。

ただしこれは1回の走行で測った力の指標であって、怪我が起きた数を数えた研究ではありません。「厚いクッションは危ない」という読み替えは、この研究からはできません。

いっぽう、市民ランナー848名を無作為に2群へ振り分け、6ヶ月追いかけた試験もあります。硬いほうのシューズを渡された群は、柔らかいほうの群より傷害リスクが高いという結果でした(サブハザード比1.52、95%信頼区間1.07〜2.16)。ここで2つ注意が要ります。ひとつは、この試験で言う「クッション」が靴全体の剛性(N/mm)であって、ソール厚でも、この記事で扱っている衝撃吸収の実測値でもないこと。もうひとつは、体重で層別すると、この差がはっきり出たのは軽い側のランナーだけで、重い側では確かめられなかったことです。重い人ほど柔らかい靴が要る、という通説は、この試験では裏づけられませんでした。重い側で柔らかい靴が不利だった、という意味ではありません。

まとめると、こうなります。反発の効きが実験で確かめられているのは速い側のペースの範囲だけで、ゆっくり走る場面での効きは、この研究では確かめられていません。衝撃吸収は、多いほど安全とも、少ないほど安全とも言い切れません。だから、数字を見て決めるべきなのは良し悪しではなく、自分が何をしに走るのかのほうです。

自分の一足で確かめるなら:自分の週の練習を、速く走る日とゆっくり走る日に分けてみてください。そのうえで、どちらの日に履く一足を探しているのかを決めてから、数字を見に行くと迷いません。

出典(3本)
  • 出典:Hoogkamer, W., Kipp, S., Frank, J.H., Farina, E.M., Luo, G., Kram, R.「A Comparison of the Energetic Cost of Running in Marathon Racing Shoes」Sports Medicine 48(4):1009-1019, 2018(DOI: 10.1007/s40279-017-0811-2・オンライン先行公開2017-11-16/同誌に訂正記事あり(doi:10.1007/s40279-017-0840-x)・2026-08-22確認) ↑本文に戻る
  • 出典:Kulmala, J.P., Kosonen, J., Nurminen, J., Avela, J.「Running in highly cushioned shoes increases leg stiffness and amplifies impact loading」Scientific Reports 8:17496, 2018(DOI: 10.1038/s41598-018-35980-6・男性12名・かかと接地・マキシマリスト(Hoka Conquest)vs 従来型(Brooks Ghost 6)・10/14.5km/h。14.5km/hで衝撃ピーク+10.7%・荷重率+12.3%(原典抄録で逐語確認・2026-08-24)。Alexe 2026レビューが逆側の代表として引用していた元研究・2026-08-24確認) ↑本文に戻る
  • 出典:Malisoux, L., Delattre, N., Urhausen, A., Theisen, D.「Shoe Cushioning Influences the Running Injury Risk According to Body Mass: A Randomized Controlled Trial Involving 848 Recreational Runners」The American Journal of Sports Medicine 48(2):473-480, 2020(DOI: 10.1177/0363546519892578・848名のランダム化比較試験。ここでの「クッション」は剛性(N/mm)であってソール厚ではない。第2著者はDecathlon SportsLab所属。体重による層別は事後解析・2026-08-24確認) ↑本文に戻る

用途から入りたい場合は、用途で選ぶランニングシューズが近道です。

まとめ

  • 反発と衝撃吸収は同じ落下試験から出る別の数字です。反発は戻ってきたエネルギーの割合(%)、衝撃吸収は受け止めた度合い(SA)
  • 柔らかさは別の道具(硬度計)で、ミッドソールの切断面を測ります。外から測ると保護層と凹凸を一緒に読んでしまうためです。ACとHAは目盛りが違うので換算しません
  • 柔らかさだけは、値が小さいほど柔らかい向きです。反発と衝撃吸収は大きいほうが強い側なので、ここだけ読み方が反転します
  • 3つは同じ向きに動きません。高反発でも衝撃の受け止めは平凡、ということは普通に起こります。厚さと反発も直結しません
  • 実測の反発と、履いて感じる反発感は別物です。重さ・プレート・ソールの形・その日のペースが混ざるので、数字は感覚の答え合わせの材料として使います
  • 中央値は順位ではありません。掲載している足の真ん中というだけです。基準点としては、自分のマイシューズの列のほうが役に立ちます
  • 高いほど良いとは言えません。反発の効きが確かめられているのは速い側のペースの範囲だけで、衝撃吸収は多いほど安全とも少ないほど安全とも言い切れません

次にやることを1つだけ選ぶなら、自分のマイシューズのページを開いて、反発・衝撃吸収・柔らかさの3つを中央値の列と見比べてみることです。→ シューズを探す

ラボの数字は、体の代わりに答えを出すものではありません。自分の感覚を裏づけるための、もうひとつの物差しです。

感覚に、根拠を。

公開日 2026-09-14|更新日 2026-10-18

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