オーバープロネーションなら安定性シューズ? 研究で分かっていること・いないこと

  • 店の計測で「オーバープロネーション(回内しすぎ)ですね」と言われた
  • 靴底のかかとの内側ばかりすり減っている
  • 安定性シューズしか選んではいけないのか、迷っている

「足首が内側に倒れる人は安定性シューズを」という説明は、メーカーの公式ページにも店にもよく出てきます。けれど、安定性シューズで怪我が減るかを確かめた研究を読むと、結果は割れています。

この記事では、足の倒れ込み・安定性シューズ・怪我の起きやすい場面について、研究10本を原典(論文本体または要旨)で読みました。分かっていることと分かっていないことを分けて書いています。書いているのは、サブ3(フルマラソン3時間切り)の市民ランナーで、このサイトの運営者です。

読み終えると、店の判定に縛られずに、安定性シューズを候補に入れるかどうかを自分で決められます。

結論

安定性シューズは、選んでよい候補の1つです。必ず要るものだとは研究で示されていません。

  • 足首が内側に倒れる足と怪我の関連は小さく、はっきりしているのはすねの痛みくらい
  • 安定性シューズで怪我が減るかは、研究で割れている
  • 研究で怪我が多かったのは、走り始めの時期と、1回のランを伸ばしすぎた後

オーバープロネーションだと怪我をしやすい?

結論:関連はありますが小さく、はっきりしているのはすねの痛みくらいです。

オーバープロネーション(過剰回内)は、着地のときに足首が内側へ大きく倒れ込む動きのことです。

右足を後ろから見ると

接地した瞬間体重が乗ると内側へ倒れ込む← 内側(親指側)外側 →
模式図です。内側への倒れ込みは衝撃を逃がす自然な動きで、問題にされるのは倒れ込みが大きい場合です。

この節で紹介する2つの研究は、立った姿勢で足の形を測ったもので、走っているときの倒れ込みを測ったものではありません。

足の形と怪我の関係を追った21の研究(6,228人)をまとめた分析があります。倒れ込みやすい足の形と怪我の関係は、次のとおりでした。

怪我・痛み 倒れ込みやすい足との関係
すねの内側の痛み(シンスプリント) 関連あり。ただし影響は「小さい」
膝のお皿まわりの痛み 関連を示す証拠が「ごく限られる」
足首・足の怪我、疲労骨折などの骨の障害 関連は見られなかった

ふつうの靴(中立の靴)で走り始めた初心者927人を1年追った研究もあります。倒れ込みやすい足の人は、中立の足の人より怪我が多くありませんでした。走った距離あたりで見ると、むしろ少なかったほどです。

倒れ込みが特に大きい足は、この研究では人数が少なく、判断できていません。そう言われた人も、選ぶ順番は下の「どう選ぶか」と同じです。

店の計測やセルフチェックの結果は、どう受け止める?

結論:判定は足の動きの目安で、靴を決める答えではありません。

足の形で靴を選ぶ方法そのものを試した研究があります。アメリカ軍の新兵を対象にした3つの試験(合わせて約7,200人)では、土踏まずの形に合わせて靴を選んだ人と、形に関係なく全員が安定性の靴を履いた人で、怪我の数にほとんど差がありませんでした。

この3試験は新兵の訓練が対象なので、市民ランナーでは結果が違うかもしれません。また、研究が見たのは立ったときの足の形や足裏の形で、走っているときの動きの判定を直接試したものではありません。それでも、「判定が出たから、この種類の靴でなければならない」と考える根拠は、この記事で読んだ範囲では見つかりませんでした。

靴底のかかと内側がよく減る人を、オーバープロネーションのランナーとして説明するメーカーもあります(ミズノ)。ただ、減り方に合わせて靴を選ぶと怪我が減るかを確かめた研究は、この記事で読んだ範囲にはありませんでした。

出典(4本)

いま痛みがあるなら

痛みが続いているなら、靴を選ぶより先に、医療機関で診てもらってください。この記事が扱うのは、これから走る人の靴の選び方で、痛みの原因を見分ける方法ではありません。

厚底と足首の倒れ込みを測った研究は、厚底で怪我は増えるのかで紹介しています。

オーバープロネーション向けの靴(安定性シューズ)で怪我は減る?

結論:研究は割れていて、必要だとは示されていません。

安定性シューズや、倒れ込みをより強く抑える靴(モーションコントロール)で怪我が減るかを比べた主な研究は、比べたものも測ったものも、それぞれ違います。

比べたものと、結果

モーションコントロール版 対 標準版倒れ込みを抑える仕組みを足した版同じモデルの2版・市民ランナー372人・6か月怪我の起きる率:標準版の約0.55倍安定性シューズではなく、モーションコントロールの靴の結果靴メーカー(デカトロン)が研究費の一部著者3人は同社の社員ほかの靴に当てはまるとは限らない(著者)足の形で選ぶ 対 全員に安定性の靴新兵・3試験・約7,200人怪我:ほとんど差がなかった安定性と中立の靴を比べた試験ではない市民ランナーでは違うかもしれない3種類の靴を比べた試験女性81人・13週・少人数痛み:モーションコントロールの靴で多かった怪我の数ではなく、痛みと休んだ日数
  • モーションコントロール版の試験:足の形で分けると、差が見られたのは足が倒れ込みやすい形の94人だった(追加の分析で、著者も「予備的」)。標準の靴では、足が倒れ込みやすい人の方が中立の人より怪我が多かった(これも予備的)
  • 3種類の靴の試験:安定性の靴の人は、練習を休んだ日が最も少なかった。足が倒れ込みやすい人では、走っているときの痛みが安定性の靴の方が中立の靴より大きかった

2022年の系統的レビュー(複数の研究をまとめて評価した論文)では、倒れ込みを強く抑える靴(モーションコントロール)とふつうの靴は2試験・421人、安定性の靴とふつうの靴は1試験・57人で比べられていて、どちらも「不確か」(証拠の確かさが非常に低い)という結論でした。つまり、安定性シューズは怪我を減らすかもしれないし、変わらないかもしれません。どちらも対象の人数が少なく、結果は増える方にも減る方にも振れています。どちらとも言い切れないのが、今の研究です。

出典(3本)

安定性シューズは、何が違う?

結論:安定性やオーバープロネーション向けであることを、メーカーが公表している靴です。

作りの説明はメーカーごとに違います。アシックスは、倒れ込みが大きい人向けに、過度な倒れ込みを抑える安定性に優れたモデルを挙げています。ミズノの案内は、かかと内側が減りやすい人に向けた、安定性に配慮した設計のモデルです。どの部品がどれだけ倒れ込みを抑えるのかまでは、公表していないことも多いです。

シューログの「安定性」の絞り込みは、メーカーが安定性・オーバープロネーション対応を公表しているモデルです。公表が無いモデルは「安定性がない」という意味ではありません。

出典(1本)
  • 出典:アシックス(ASICS)日本公式「プロネーションガイド」アシックスジャパン公式サイト(asics.com), 2026(メーカー公式ページ・2026-10-10確認)
安定性モデルを数値で見る

メーカーが安定性を公表しているモデルを、重さ・ソールの厚さ・ドロップ・定価で並べられます

安定性モデルを一覧で見る

研究で怪我が多かった場面

結論:怪我が多かったのは、走り始めの時期と、1回のランを伸ばしすぎた後です。

ここからは靴ではなく、走り方の側の研究です。

走り始めの時期:走り始めた人の怪我は、走り慣れた市民ランナーの2倍以上でした(13の研究をまとめた分析。走る時間1000時間あたりの怪我が約18件と約8件)。

1回のランの距離については、次の研究があります。

その日の距離と、使いすぎの怪我の起きる率

過去30日の最長(1)1.12①②③その日の距離 ÷ 過去30日の最長距離距離の比①と比べた怪我の起きる率①最長より短い〜1.1倍まで基準②1.1倍を超え2倍まで約1.5〜1.6倍③2倍を超える約2.3倍約5,200人を1年半追った観察。防げると確かめたものではない。

一方で、よく聞く「週の距離は10%ずつ増やす」というルールは、確かめた試験で怪我が減りませんでした。

初心者532人の試験 怪我をした人
週10%ずつ増やす13週の練習 20.8%
ふつうの8週の練習 20.3%

差はありませんでした。上の5,200人の研究でも、週ごとの距離の増え方と怪我には関連が見られませんでした。

上の2つの数字は観察した結果で、「これを守れば防げる」ことまでは確かめていません。それでも、靴を変える前に見直せる場面として、知っておく価値はあります。

出典(3本)

自分で確かめるなら

結論:最近1か月でいちばん長く走った距離を覚えておき、それを超える日を自分で把握しておきます。

  1. 時計やアプリの記録で、過去30日の最長距離を見る
  2. 次のランがその距離を超えるなら、超える日だと分かったうえで走る(研究で怪我が多かったのは1.1倍を超えた日。防げると確かめられた方法ではありません)
  3. 走り始めの時期は、怪我が多い時期だと知ったうえで、距離を伸ばすことより、無理をせず自分が続けられるペースと頻度で続けることを大事にしたい、と私は考えています

どう選ぶか

結論:安定性モデルも候補に入れ、数値で絞ってから、履いて違和感のない方を選びます。

  1. 安定性の絞り込みで、メーカーが安定性を公表しているモデルを見る。重さ・ソールの厚さ・ドロップ・定価を、出典つきで並べて比べられます
  2. ふだんの靴(安定性ではないモデル)も候補に残す。シューズ検索のマイシューズに今の靴を登録すると、差が数値で出ます
  3. 店で、安定性モデル1足とふだんの靴1足を履いて、軽く走ってみる。違和感のない方を選ぶ

「快適だと感じる靴を選ぶことが、怪我を減らすことにつながるかもしれない」という考え方を、研究者が提案しています。ただしこれは提案で、試験で確かめられたものではありません。

出典(1本)
  • 出典:Nigg, B. M., Baltich, J., Hoerzer, S., Enders, H.「Running shoes and running injuries: mythbusting and a proposal for two new paradigms: 'preferred movement path' and 'comfort filter'」British Journal of Sports Medicine 49(20):1290-1294, 2015(DOI: 10.1136/bjsports-2015-095054・総説であって新規データではない。「快適性フィルタ」は提案された枠組みであり、検証された法則ではない・2026-08-24確認)

履き比べで見るところ

結論:走ってみて、かかとのぐらつき・内側の当たり・違和感を比べます。

研究で確かめた見方ではなく、店で比べるときの目安です。

  • かかとが左右にぐらつかないか
  • 土踏まずや足の内側に、押される・当たる感じがないか
  • 数分走って、どこかに違和感が残らないか

店で走れるなら、同じペースで両方を試すと違いが分かりやすくなります。試せる場所(メーカーの試走会・専門店・レース会場のブース)を先に探しておくと、選びやすくなります。

いまの靴で痛みなく走れているなら

結論:変える理由は、この記事で読んだ研究からは出てきません。

いま安定性シューズを履いている人も、ふつうの靴を履いている人も、痛みなく走れているなら、靴の種類を変えるべきだと示す研究は、この記事で読んだ範囲では見つかりませんでした。替えるときは、同じ種類から選ぶのも、違う種類を試すのも自由です。

運営者の考え(ここは研究の結論ではなく、私個人の考えです)

怪我の根本的な問題は、シューズ側ではなくランナー側にあると私は思っています。特にオーバーユース(使いすぎ)です。走る距離を急に伸ばしたり、運動習慣のない人が走り始めたり、慣らす期間がなかったりすることが原因ではないか、と感じています。だから、怪我をしたくない気持ちをシューズだけに預けるのは、よくないと考えています。

私自身、走り始めたころに、シンスプリントや足底筋膜炎と思われる痛みが出ました。今思うと、走る距離を急に伸ばしたことが原因だったのではないかと思っています。それからは、距離を少しずつ伸ばすように気をつけています。それでも、最近怪我をした時期を振り返ると、どちらも走る距離を急に伸ばした時でした。1つは大会に間に合わせようとして伸ばした時、もう1つは涼しくなって走りやすくなり、つい伸ばしてしまった時です。

走り始めの人は、いわば「走行距離0kmのランナー」だと私は思っています。体がまだ走ることに慣れていないと思うので、最初の距離の伸ばし方には特に気をつけてほしいと思っています。

私がランニングの楽しさを特に感じるのは、快適でスピードの出しやすいシューズを履いたときです。個人的な思いが強いかもしれませんが、走るのが楽しいと思える1足を選んでほしいと思っています。

私自身の選び方は、私のランニングシューズの選び方に書いています。

まとめ

  • 足首が内側に倒れる足と怪我の関連は小さく、はっきりしているのはすねの痛み(シンスプリント)くらいです
  • 安定性シューズで怪我が減るかは、研究で割れています。選んでよい候補の1つで、必ず要るものではありません
  • 研究で怪我が多かったのは、走り始めの時期と、1回のランを最近の最長より伸ばしすぎた後です。週10%ルールは試験で差が出ませんでした
  • 選ぶ順番は、安定性モデルも候補に入れる→数値で絞る→履いて違和感のない方
候補とふだんの靴を並べる

安定性モデルを数値で絞り込み、マイシューズに登録した今の靴と見比べられます

候補を数値で絞り込む

感覚に、根拠を。

公開日 2026-10-10|更新日 2026-10-26

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