厚底でふくらはぎは弱る? 分かっていることと、練習の組み方

「厚底ばかり履いていたら、ふくらはぎが弱るのではないか」——厚底で走る量が増えるほど、この不安は出てきます。前は感じなかった坂がきつい、といった実感が重なると、なおさらです。

この記事は、厚底シューズを主に履いていて、脚が弱っていないか気になっている人に向けて書いています。

結論

厚底シューズでふくらはぎが弱るかを追いかけた研究は、探した範囲では見つかりませんでした。分かっているのは、蹴り出しの局面でふくらはぎの筋活動が減ることです。だから考えるのは「厚底をやめるかどうか」ではなく、減ったぶんをどこで補うかのほうです。

厚底でふくらはぎは弱るのか

厚底シューズを履き続けた人のふくらはぎが弱ったかどうかを追いかけた研究は、探した範囲では見つかりませんでした。

「弱る」と言うには、同じ人を長い期間追って筋力や筋の大きさを測り直す必要があります。だから、弱ると書くことも、弱らないと書くこともできません。

厚底を履き続けた人を追って、ふくらはぎの筋力や大きさを測り直した研究探した範囲では見つからなかった(2026年9月時点)確認できた研究は、この3種類筋活動を測った実験(2本・1回の走行)蹴り出しのふくらはぎの筋活動は低かった増えた筋もある・筋力は測っていない薄い靴に替えた・走り方を変えた試験(2本)6週間・61名/12週間・解析24名その期間で、ふくらはぎの筋力は変わらなかった横断研究(1本)1時点の比較・因果は分からない

分かっているのは、使われ方が変わることです。アスリートを対象に、カーボンプレート入りの厚いミッドソールのレーシングシューズと従来型のレーシングシューズを比べた実験では、蹴り出しの局面でふくらはぎの内側(腓腹筋内側頭)の筋活動が約50%低かったと報告されています(14km/h・45秒の走行での測定)。ふくらはぎの外側でも、蹴り出しの前半で差が出ています。

これは1回の走行での「活動量」の話です。筋が細くなった・力が落ちたという測定ではありません。

しかも「厚底なら全部の筋がラクをする」わけでもありません。クッションの厚い靴で走ったときに、お尻の横の筋肉と長腓骨筋(すねの外側面を通る筋肉)の活動はむしろ増えたという報告があります。部位によって増える筋も減る筋もある、というのが正確な言い方です。

期間を区切って測った試験では、ふくらはぎの筋力は変わっていません。

  • 6週間・61名:底屈の筋力は3つの測り方すべてで有意差なし
  • 12週間・解析24名:最大トルク・筋の厚みとも変化なし
  • 横断研究1本:靴の違うランナー同士を1時点で比べたもの。因果は分からず、本文の記述と表の数値が食い違う箇所があったため数値は引用しません

試験2本はどちらも薄い靴・走り方の側の介入研究ですが、「数ヶ月で筋力が動く」という前提そのものが確かめられていない、とは言えます。この3本の中身は、別の記事に原典つきで整理しています。→ マラソン練習に薄底シューズは必要か?

自分の一足で確かめるなら:いま週に何回、どの靴で走っているかを書き出してみてください。この記事で足すものは、その表の空いているところに入ります。

出典(5本)
  • 出典:Hata, K., Hamamura, Y., Noro, H., Yamazaki, Y., Nagato, S., Kanosue, K., Yanagiya, T.「Plantar Flexor Muscle Activity and Fascicle Behavior in Gastrocnemius Medialis During Running in Highly Cushioned Shoes With Carbon-Fiber Plates」Journal of Applied Biomechanics 40(3):192-200, 2024(DOI: 10.1123/jab.2023-0170・ペイウォール=抄録のみ確認(本文未読)。被験者数は抄録に記載が無いため当サイトでは人数を書かない/14km/h×45秒の1回の走行での測定であり、筋力・筋量の変化を測ったものではない・2026-09-09確認) ↑本文に戻る
  • 出典:Becker, J., Borgia, B.「Kinematics and muscle activity when running in partial minimalist, traditional, and maximalist shoes」Journal of Electromyography and Kinesiology 50:102379, 2020(DOI: 10.1016/j.jelekin.2019.102379・実験室での急性比較。長期に脚が弱くなるかを調べた研究ではない・2026-08-22確認) ↑本文に戻る
  • 出典:Fuller, J.T., Thewlis, D., Tsiros, M.D., Brown, N.A.T., Buckley, J.D.「Six-week transition to minimalist shoes improves running economy and time-trial performance」Journal of Science and Medicine in Sport 20(12):1117-1122, 2017(DOI: 10.1016/j.jsams.2017.04.013・61名・6週間のRCT。5kmタイムは改善したが、足関節底屈筋力は3つの測定法すべてで変化しなかった・2026-08-22確認) ↑本文に戻る
  • 出典:Zhang, C., Deng, L., Zhang, X., Wu, K., Zhan, J., Fu, W., Jin, J.「Effects of 12-week gait retraining on plantar flexion torque, architecture, and behavior of the medial gastrocnemius in vivo」Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 12:1352334, 2024(DOI: 10.3389/fbioe.2024.1352334・12週間の薄底+前足部接地への移行。最大筋力も筋の厚さも変化しなかった。全文の方法によると、走り方の指導に加えて足の機能と筋力の運動(1回20分)も12週間行っている。対象は男性のみ・2026-11-03確認) ↑本文に戻る
  • 出典:García-Arrabé, M., Batuecas-Sánchez, I., de Vidania, S., Bravo-Aguilar, M., Ruiz-Ruiz, B., Romero-Morales, C.「Effects of technological running shoes versus barefoot running on the intrinsic foot muscles, ankle mobility, and dynamic control: a novel cross-sectional research」Brazilian Journal of Physical Therapy 28(4):101092, 2024(DOI: 10.1016/j.bjpt.2024.101092・オープンアクセス(PMC11269782・全文読了)/横断研究22 vs 22=因果は言えない(著者も明記)/全文のTable 2に本文の記述と符号が逆の項目・上下限が逆転した信頼区間が複数あるため、当サイトでは存在と方向のみ記録し数値は引用しない・2026-09-09確認) ↑本文に戻る

減ったぶんをどこで補うか — 練習の組み方

厚底をやめる必要はありません。減った刺激を、別の場所で足すという考え方です。

蹴り出しでふくらはぎの働きが減るなら、ふくらはぎがしっかり働く場面を週のどこかに置く——これが素直な組み立てになります。ただし、この組み方が筋力を保つと確かめた研究はありません。

置き方は3つあります。

足すもの 置き方 意図
厚みの控えめな靴 週1〜2回のジョグや流し 厚底一色にしない
坂・流し 短い時間で強度だけ上げる 蹴り出しが強く働く場面を作る
補強(筋トレ) ランオフの日に 走行以外で足す

補強は、靴を替えなくても成立します。 次の2本の試験があります。

  • ベアフットシューズで歩いただけのグループが、足の強化運動をしたグループと同じくらい足の筋力を増やした
  • 習慣的に靴を履く非アスリートの成人53名で、同じ足の運動を裸足と靴ありで比べた8週間の試験:靴を履いていても4週目から足趾の筋力は伸びた(裸足は2週目から)

つまり、「薄い靴でしか鍛えられない」わけではありません。

運営者の場合(範囲の明示)

ここから「——運営者個人の体験はここまでです」の行までは、運営者個人の体験であり、シューログとしての実走テスト・実測ではありません。人数は1人です。

運営者は、筋トレを週1〜2回入れています。目的は優先順に、①理想の体 ②怪我をしない ③走りの効率です。基本は走らない日に置きますが、朝ジョグと同じ日になることもあります。その場合は時間を空け、筋トレのときにランニングシューズは履きません(靴も分けています)。

厚底か薄底かという立場については、本人の言葉はこうです。

私は薄底否定派ではないです

普段のジョグは、前足部の厚さが控えめで接地感のある靴を好んで履いています。好みで選ぶこと自体は自由で、記事で整理しているのは根拠の範囲だけです。

坂と流しは、こう置いています。

  • 流し:ジョグの終わりに必ず100mほど入れています。
  • ジャンプトレーニング:ポイント練習の前に、アップとドリルを兼ねて。靴はそのままポイント練習で履く靴です(ドリル用に分けたほうがいいのだろうとは思いつつ、時間と荷物を減らすためにそのままにしています)。
  • 200mの坂ダッシュ:レースから遠い時期——春ごろ——に入れたりしています。靴は接地感のあるジョグ用で、アディゼロ SL 2やペガサスのようなモデルです。

上の表に照らすと、流しはジョグのたび、坂は時期を限ってという置き方になっています。

補強については、陸上競技でよくやる補強運動はしていません。週1〜2回の筋トレがあるので、そちらに寄せている形です。

——運営者個人の体験はここまでです。ここから先は一般の読者に向けた内容に戻ります。

自分の一足で確かめるなら:まず1つだけ足してください。3つ同時に変えると、何が効いたか分からなくなります。

出典(2本)

薄い靴を1足足すかどうかを迷っているなら、その根拠の範囲はこちらに整理しています。→ マラソン練習に薄底シューズは必要か?

履き分けに根拠はあるか — 複数の靴を並行して使う

「何足かを使い分けている人のほうが故障が少なかった」という報告はあります。ただし、厚底と薄底という組み合わせを確かめた研究ではありません。

市民ランナー264名を追った調査(平均15.5週)で、複数のランニングシューズを並行して使うことは故障の保護因子だったと報告されています(ハザード比0.614、95%信頼区間0.389〜0.969)。ただし観察であって因果ではなく、靴の種類も区別されていません(「1足より多いか否か」の二分です)。いっぽう「薄い靴に替えれば故障が減る」という側も、140名を12ヶ月追った試験で故障の発生率に群間差はありませんでした。つまり履き分けの根拠は「複数使うこと一般」の側にあって、「薄いこと」の側にあるわけではない、というのがいまの整理です。

自分の一足で確かめるなら:いま同じ靴だけで走っているなら、もう1足を「厚さ違い」で決める前に、まず2足目を回すこと自体を試してください。

出典(2本)
  • 出典:Malisoux, L., Ramesh, J., Mann, R., Seil, R., Urhausen, A., Theisen, D.「Can parallel use of different running shoes decrease running-related injury risk?」Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports 25(1):110-115, 2015(DOI: 10.1111/sms.12154・前向きコホート研究(264名・平均15.5週)。靴の使い方は割り付けではなく参加者の自己選択・2026-08-22確認) ↑本文に戻る
  • 出典:Abran, G., Schwartz, C., Dardenne, N., Delvaux, F., Croisier, J.L.「Minimalist Footwear and Softer Running Technique Alter Injury Location but Not Incidence in Recreational Endurance Runners」The American Journal of Sports Medicine 54(1):109-117, 2026(DOI: 10.1177/03635465251392242・140名・12ヶ月のRCT(ClinicalTrials.gov NCT05499871)。3群(ミニマリストシューズ47名・走り方の再訓練47名・ストレッチの対照46名)・2026-11-03確認) ↑本文に戻る

この2本の中身と限界は、別の記事に整理しています。→ マラソン練習に薄底シューズは必要か?

ミッドソールは使うとへたります。2足を回す理由は、脚の話だけではありません。→ シューズの替え時

合わないサイン — 翌日まで残る張り

見るのは張りの強さではなく、場所と、翌日まで残るかどうかです。

ふくらはぎとアキレス腱を、走った翌日に確かめます。判断の材料になるのは次の2つです。

  • 翌日まで残る、場所のはっきりした張りや痛み(全体の筋肉痛ではなく、押すと痛む一点)
  • 同じ場所が2回目(別の日に、同じ場所で同じことが起きる)

このどちらかが出たら、次の順で進めます。

  1. 休むか、履き慣れた靴に戻して様子を見る(戻して消えるなら、靴との相性か慣らす速さの問題)
  2. 張りが消えたあとで、ソール厚とドロップを一段下げた靴を1回試す(痛みが出ているあいだは試さない)
  3. 1で戻しても続く・強くなるなら(2には進まず)、走りながら様子を見ず医療機関で相談する

ドロップ(かかとと前足部の高低差)を変えると何が起きるかを追いかけた研究は、この記事では扱っていません。下げれば楽になるとは限らないので、合うかどうかを見るための1回として扱ってください。このサイトでは怪我の診断も治療の判断もしません。

自分の一足で確かめるなら:張りが出た日は、靴・距離・ペース・路面の4つだけ書き残してください。2回目が来たとき、共通点がその4行に出ます。

数値で探す — かかとのソール厚とドロップで範囲を絞る

「厚い」「薄い」という感覚の言葉ではなく、いま履いている靴のミリ数を起点にすると、探す範囲が決まります。

シューログに収載している166足のうち、かかとのソール厚を確認できたのは116足です。

かかとのソール厚の分布

①②③④20304050mm中央値 39mm①25mm未満0足②25〜35mm未満10足③35〜40mm72足④40mm超34足
1点=1足(メーカー公表値)。ソール厚が空欄の50足は入れていません。2026年11月3日現在。

確認できた範囲で最も薄いのは27mmです。シューログでソール厚を確認できた116足では35〜40mmが中心で、「一段薄い側」は30mm台の前半になります(市場全体の分布ではありません)。

探し方は2段階です。

  1. いま履いている靴のかかとのソール厚とドロップを調べる(メーカーの製品ページか、シューログの個別ページ)
  2. そこから一段薄い範囲で絞る(例:39mmを履いているなら30〜35mmあたり)

ソール厚が空欄の靴は、この絞り込みの母数に入りません。推測で埋めていないためです。ドロップは「薄さ」とは別の軸なので、2つを同時に大きく変えないほうが、何が効いたか分かります。

自分の一足で確かめるなら:いまの1足のミリ数を控えて、シューズを探すでその一段薄い範囲を指定してみてください。候補の数が、選択肢の広さです。

ソール厚とドロップが何を指す数字かは、こちらにまとめています。→ ランニングシューズの数値の読み方

まとめ

  • 厚底でふくらはぎが弱るとも弱らないとも言えません。同じ人を追って測り直した研究が、探した範囲で見つからないからです
  • 分かっているのは、蹴り出しでふくらはぎの筋活動が約50%低かったという1回の走行での測定。筋力が落ちたという測定ではありません
  • 部位によって増える筋もあります(お尻の横の筋肉と長腓骨筋は、厚いクッションでむしろ増えたという報告)
  • 6週間・12週間の試験(薄い靴・走り方を変えた側)では、ふくらはぎの筋力に変化はありませんでした
  • 組み方は、厚底一色にしない・坂や流しを短く入れる・走らない日に補強。この組み方が筋力を保つと確かめた研究はありません
  • 靴を履いたままの足の運動でも筋力は伸びました。薄い靴でしか鍛えられないわけではありません
  • 履き分けの根拠は、「複数の靴を並行して使う人は故障が少なかった」という観察まで。厚底と薄底という組み合わせの是非は未検証です

次にやることを1つだけ選ぶなら、いま履いている靴のかかとのソール厚を調べて、一段薄い範囲に候補が何足あるかを見ておくことです。→ シューズを探す

張りが続くときは、記事ではなく医療機関へ。ここで扱えるのは、そこに行く手前までです。

感覚に、根拠を。

公開日 2026-09-12|更新日 2026-10-25

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